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視覚言語と概略図  

建築家は、デザインのはじめに、人や物がどう動くのか、音がどう響くのかなどを、円や線や矢印を使って描きながら考え、デザインの構想を練っています。こうした円や線や矢印は、目で見てわかるようになっているので、ビジュアルボキャブラリー、視覚言語と呼ばれています。視覚言語を使うと、言葉がなくてもデザインの意図を他人に伝え、コミュニケーションをとることができます。また、​視覚言語で描かれた図を、スキーマティックドローイング、概略図と呼んでいます。

ネットワーク仙台では、デザインのはじめに、視覚言語と概略図に慣れるための練習を取り入れています。図を描くときは、鉛筆ではなくて水性黒マーカー(細目)を使います。

●シャボン玉の一生

シャボン玉を吹き始めたときから、10回程度吹き終わるまでの間に、シャボン玉が生まれてから弾けて消えるまでのゆっくりした動きをスケッチします。手や顔は描かずに、シャボン玉の形、線、矢印だけで表します。はじめの4回から5回は注意深く見るだけにして、10回目が終わるまでにひとつだけ描きます。

シャボン玉の動きを描こう.jpg

「シャボン玉の動きをよく見てね」と南フロリダ大学の学生さん

2018年立町小学校5年「西公園あそび広場をデザインしよう」

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いろいろな種類の矢印でシャボン玉の動きを描きました

2022年建築と子供たちMANAVIVAプロジェクト

「​視覚言語とコミュニケーション〜シャボン玉の一生を描こう〜」

●風船の大レース

色の違う2つか3つの風船をふくらませ、1か所から飛び散るように片手に持ち手を離します。いっせいに部屋の中を飛び回り、しぼんで落ちるまで、どの風船がどう飛んだのか一瞬の動きを記憶します。全部の風船が飛んだ空中の道筋を思い出しながら線や矢印で表します。はじめは見るだけにして10回目が終わるまでに一つだけ描きます。

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「風船は速いよ」

2017年六郷小学校5年「つながる小道をデザインしよう」

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風船の色の違いを異なる線で表現しました

2018年立町小学校5年「西公園あそび広場をデザインしよう」

●おもちゃの仕組み図

 ネジ巻式おもちゃを集め、それらのおもちゃを動かしてよく観察します。おもちゃはどのような仕組みでどのように動くのか考えて図にします。図には、矢印を用いて方向を示します。また、原理の説明、ゼンマイ、バネなどの言葉も記入することができます。

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おもちゃの仕組み坂口はるま2.jpg

2022年建築と子供たちMANAVIVAプロジェクト

「​視覚言語とコミュニケーション〜ネジ巻きおもちゃの仕組みを描こう〜」

ネジ巻きおもちゃ(飛行機)の仕組み

1.  03年南小泉小3年視覚言語池の音.jpg

聴診器を使って池の音を聴いてみよう

2003年南小泉小学校3年「たんけん・発見・南小泉」

●音の写生図

はじめに、スライディングホイッスルやツリーベルなどの簡単な楽器を使って、同じリズム、同じ鳴らし方で音を出して、この音を線や矢印などで図にする練習をします。そのあと、街のなかのいろいろな音をさがしに街にでかけます。音を見つけたら、写真を撮ったり、スケッチやメモにとり、それらを見ながら街の音を図に表します。

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街で探した音をデザインしたよ  

2014年吉成小学校5年「吉成発見隊」

 出典:Architecture and Children  ©School Zone Institute

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くろしお太鼓の音で飾られた図書箱

「ここに太鼓の音を描くんだね」と図書箱を見つめる鈴木師匠

応用編 “太鼓の音で図書箱を飾ろう”吉成小学校5年「東六郷小学校に贈る図書箱をデザインしよう」

 

2011年~2012年、吉成小学校5年生は、児童会活動として、津波で被災した東六郷小学校(2017年閉校)に本を贈るプロジェクトに取り組んでいました。東六郷小学校は近くの中学校を間借りしているため、本を置く場所がないことを知った子供たちは、持ち運びが可能で、屏風のように折りたたむことができる図書箱を一緒に贈りたいということで、ネットワーク仙台に協力の依頼がきました。

そこで、ネットワーク仙台のメンバーが図書箱を設計し、製作は木工の達人鈴木功師匠にお願いしました。そして、出来上がった図書箱の背面に、東六郷小の子供たちを励ますような絵を描こうと、東六郷小の子供たちが演奏する「くろしお太鼓」の音をビデオで聴いて、それをデザインすることになりました。

シャボン玉や風船の軌跡、楽器の音などを円や矢印で描く視覚言語の練習でウオーミングアップをしたあと、“らせん”“放射”“格子”などの自然のデザインパターンのなかから、自分が「くろしお太鼓」からイメージするものを決め、各辺5㎝の正方形に切られた黒い紙を使って表現。そして、これをもとに、太鼓の音のイメージを改めてクレヨンで描きました。   

その後、仕上げた作品に窓紙をあて、気に入った部分をトリミングしたうえで図書箱に絵の具で描いて完成させました。

後日、吉成小の子供たちは、本と完成した図書箱を贈呈するため東六郷小へ。東六郷小のみなさんはとても喜んでくれたそうです。

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